9月4日、晴れ。宿を発ってすぐ、夏が終わったのに気が付く。豊かな谷の緑はあちこち黄色に染まり、道脇には落ち葉が舞う。海が迫るにつれ主役は針葉樹に変わるが、林に射し込む陽は確かに秋のものだ。山がちな地形をなぞって走ると、空の下、前方の小さな山をかすめ、濃い霧のようなものが流れていく。それが一枚の巨大な低層雲だとわかる頃、そこはもう太平洋だ。道は曲がりくねりながらアップダウンを繰り返し、時おり雲よりも高い崖の上を走る。
5日、快晴。入り江に臨む宿の窓からは、街道が湘南の134号のように見える。海を越えた情景の響き合いが旅の終わりを意識させるが、走り出せばそれも忘れてしまう。海沿いは雲ひとつ無い青空。北上する道はしばらく内陸に入り、US101に接続する。
6日、引き続き快晴。US101を上り、映画『スタンド・バイ・ミー』の故郷、オレゴンに入る。線路が道路と併走する区間、ベン・E・キングの歌を口ずさまずにはいられない。
7日、晴天。海岸の砂丘地帯、オレゴン・デューンズを出発し、州最北部の町シーサイドを目指す。海岸線は横風が強く、また冷たい。道は断崖、ビーチや磯の間近、陸の放牧地帯を行き来し、海の香りと家畜の匂いが入れ替わりにやってくる。
8日、シーサイドにて休養。強風の砂浜で、太平洋の水に触れてみる。
9日、晴れ。ワシントン州に入り、シアトルの西に位置する島へ向かう、最後のライド。アバディーンの町を抜け、サウスワースから船に乗る。日の暮れていく水の上、火を落としたバイクにずっと寄り添ったまま。
※この日誌は2007年9月22日付の週刊NY生活紙面および同紙デジタル版に掲載されたものです。
海に着いちゃいました。たぶん太平洋です。海岸線を走るハイウェイ1にぶつかったとき、霧というか雲で海がぜんぜん見えなかった。けっこう寒く、内陸も枯葉が散って秋の気配が強いです。
もう横断は済んだけれど、旅は続きます。お祝いはいつになるのか・・・
太平洋岸を北上し、シアトルのほうへ向かっています。海沿いは気持ちいいけれど、風が強く、寒いです。写真はオレゴンの砂丘、オレゴン・デューンズにて。現在ワシントン州まであと少しのシーサイドという町に居ます。
32日目の9日、シアトル近郊のヴァション島に到着、coast to coastという一つの旅が終わりました。
おかげさまで無事に完走しました。あとは単車の新しい持ち主を探すだけ。次の日の準備に追われる毎日から開放され、やっとのんびりしています。