オートバイ米大陸横断日誌 第5回

稲妻くぐりルート66走る

[オートバイ米大陸横断日誌 第5回 経路概観図]

8月30日、晴れ/ところにより雷雨。グランドキャニオンから南下、I-40を西に走り、セリマンの町へ。この付近から、現存するルート66の最長区間が始まる。雨脚を垂らした雲が視界に散在し、前方には稲妻。道は幸運にも二つの雷雲の間を抜け、夕方、キングマンの町に辿り着く。

31日、ルート66をさらに西へ。雷雨の不安が去り、今度は猛暑が襲いかかる。濡らしたTシャツも早々に乾き切り、きつい峠を越えると、唐突にオートマンの町に入る。西部劇さながらの街並みをロバがうろつき、食堂に寄れば、外ではガンマン・ショーが始まる。土産屋をのぞいた後、北西のラスベガスへ。熱風に、メッシュのジャケットが意味をなさない。

写真: ガンマンと子供、その背景の二台のバイク
ルート66沿いの町オートマンで: ガンマンの一人が子供を前にショーの前ふりをしていた

9月1日、晴天。日没を待ってデスバレーへ。海抜ゼロを下回る谷の暑さは、夜も体温を超える。見えるのは、ライトが照らす道とサインだけ。黒い路面が闇に溶け、果てしない夜の中を飛んでいるような感覚に捕らわれる。遠くに稲妻が走るが、見上げれば星空。東に月が出た頃、谷も終わり、涼しさと共にメープルシロップのような香りが漂い出す。道を渡ろうとしたウサギが、ジグザグに跳ねながら逃げていく。

2日、快晴。シエラネバダ山脈の白さを眺めつつ北上し、西に折れてヨセミテに入る。澄んだ湖のほとりは肌寒く、滑らかな岩のドームや断崖を望む山道にはバイクの数も多い。途中、樹の幹だけが立ち並んでいたのは山火事の跡だろう。

3日、変わらず快晴。進路を北西に取り、カリフォルニアワインの里、ナパバレーに向かう。金色の牧草地が眩しく、向い風が思いがけず強い。


※この日誌は2007年9月15日付の週刊NY生活紙面および同紙デジタル版に掲載されたものです。


付録

8月30日 通信

現在はルート66沿い、アリゾナのキングマンという町に居ます。アリゾナはとにかく暑いです。

9月2日 通信
写真: 白い肌の山脈と、給油所に並ぶ二台のバイク
シエラネバダの麓で

灼熱のルート66をたどった後ラスベガスで一泊し、翌日夜にデスバレーを通過、今日はヨセミテ国立公園の涼しさで一息入れ、現在カリフォルニアのオークデールという町です。明日はついに太平洋!

9月3日 通信

横断しちゃうのがもったいないのと、ワインが気になるのとで、海へ向かわずにナパ・バレーの方に来ちゃいました。今夜はソノマに滞在、明日こそは海が見えるはずです。

ワイナリー巡りするほどの余裕はないので、ワインはソノマ近くのグレン・エレンという町のレストランで頂きました。

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