8月9日、快晴。光は強く、陰は涼しい。夏のニューヨークには珍しい天候が、はるか先の西海岸を思わせる。昼過ぎに市内を出、ニュージャージー州北部の一般道を西に繋ぐ。この旅は、田舎道の旅。2台のバイクで、都市や名所などの「点」よりも、その間の「線」を追い求める。ニュージャージー州北西部から、デラウェア河沿いを北へ。再びニューヨーク州に入ってすぐ、ホークズ・ネストと呼ばれる絶景の峠道が姿を現した。
翌10日は雨のち晴れ。ヘルメットに降りかかる細かい水滴を拭きながら、デラウェア河流域を離れる。雨が止んだ夕方前から進路を西へ向け、フィンガー・レイク地方へ。マーク・トゥエインゆかりの町エルミラで夜を迎えた。宿を探す私達のそばへ母親とバイクを見に歩いて来た男の子は、目の前では照れて何も言わない。バイクがまた走り出すとき、夜の芝生の上で何か叫んでいた。
11日はすっきりと晴れ、止まっていると汗がにじむ暑さ。走り出して間もなく、地形の変化を感じる。平均して見晴らしが良くなり、緑が基調のこれまでと比べ、風景に黄色が増した。ニューヨーク州最西部に近付いているのだ。道脇にはトウモロコシ畑が目立ち、酪農の規模も大きい。一頭のバイソンが郡道を渡り、民家の庭先に歩いてゆく。
12日は、バイクと人間を休ませる「点」の一日。国境を超え、カナダ・ナイアガラ・フォールズに宿をとる。膨大な量の水が滝壺へ流れ落ち、群らがる人々の頭上には、水飛沫の白い巨人が風に吹かれながらそびえ立つ。
※この日誌は2007年8月18日付の週刊NY生活紙面および同紙デジタル版に掲載されたものです。
国境を超え、カナダ入りしました。ナイアガラ、初めてです。滔々と流れる水はものすごいと同時にどこかゆるやかで、見ていて気持ちが落ち着きました。滝つぼからの水しぶきは相当な高さまで昇っていきます。休養をかねて、軽く観光。