8月13日、晴れ。ナイアガラを発ち、エリー湖の北側を西へ。平坦な土地のためか、風が強く、乾いている。道はテントのポールのように直線が直線へつながり、片側一車線、路肩は未舗装で、ペースの速い車を先行させるにも気を遣う。西日が射し始めた頃、湖畔のキャンプ場へ。五大湖最小のエリーも、目前にすれば海と見紛う大きさだ。
14日、晴天。ひたすらに西へ。強い横風が、バイクを右に左に押しやる。二匹の鯉のように、流れに逆らってスロットルを開けていく。国境まであと数十キロの町でバイクを降りた後も、船乗りの丘酔いのように、風の揺れが身体から抜けない。
15日、曇り。オハイオへの船が満員で、陸路アメリカへ。デトロイトを通り、留学中の友人に会いにミシガン大の町アナーバーへ向かう。あたりの樹木はゆったりした枝振りで、中でもクリムゾン・キングと呼ばれるカエデだろうか、深い紫の葉を茂らせた広葉樹が目を引く。
16日、快い曇り空。ミシガンからオハイオの北西の角を抜け、インディアナへ。州境を越えても、農地と牧場の風景は変わらない。道沿いの囲いの中、犬小屋のような仔牛の寝床が並ぶ。放し飼いの犬が飛び出してくる。アーミッシュの馬車を追い越すとき、子供たちがはにかみながら手を振る。
17日、快晴。最初の米横断道路リンカーン・ハイウェイに乗り、イリノイへ。道を変え、豊かな水をたたえたイリノイ河を南西にたどると、やがてペオリアの町に至る。
※この日誌は2007年8月25日付の週刊NY生活紙面および同紙デジタル版に掲載されたものです。
14日夜現在、エリー湖西端地域のカナダ側に居ます。デトロイトの方だとやや遠回りになるので、明日は船でオハイオに渡る予定。
朝の予約の電話でバイクとの旨を伝えていなかったためか、フェリーに乗れず。デトロイト経由で友人のいるアナバーへ。ミシガン大学のある町です。ヨシフ・ブロツキーはかつて客員としてここに居たんじゃなかったかな。大学のある街を選んで立ち寄るというのも、知らない土地を走るときの知恵の一つです。治安もいいし、買い物にも不便しない。
オハイオの北西部を斜めにちょっとかじり、インディアナ入り。州が変わっても景色はそのままです。
オハイオには足を踏み入れたものの、残念ながらクリーブランドやシンシナティといった町には立ち寄ることができませんでした。中西部も盆地のようなエリアは蒸し暑いけれど、日本は本当にすさまじい暑さのようですね。