「中島敦と永遠の蛇」(『松本清張研究』第10号)

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中島敦と永遠の蛇」. 松本清張研究』 第10号 (2009): 96-125.

敦が対面したのは、自分が知っていると思っていたのとは違う誰かであった。互いに似通っているとされる点において彼が嫌悪し、その一方、自己投影の中で「蛇の血縁」さえをも感じていた相手はいま、一人の他者・中島端として目の前にいた。そしてその人は、確かに自分を愛しているのだった。「不思議な感動が身體を顫はせ」(「斗南先生」)、だが若者は、その意味を十分に受け止めることができない。(中略)「他者に出会う」能力の不足は、敦の「蛇」が育っていく棲みかだったのだろう。

松本清張記念館発行の研究誌『松本清張研究』第10号の特集「同年に生を享けて—— 一九〇九年生まれの作家たち」に寄せた中島敦論。この号では松本清張の生誕100年を記念し、1909(明治42)年に生まれた清張、大岡昇平、中島敦、太宰治、埴谷雄高の五人の作家について座談会と各論が編まれている。

ISBN978-4-944228-09-6