谷川俊太郎『わらべうた』

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わらべうたは谷川俊太郎が1981年に出した自作わらべうた集。数詞以外はすべてひらがなの36編。わらべうただけに、個人の抱える痛みをあらわにしたようなタイプの詩はみられない。それでもいわゆるお子様向けの作品集にはなっておらず、道祖神的とでもいうような明るいエロティシズムが節々に顔をのぞかせ、また全体を通して、繰り返し呼んでも擦り切れないおかしみに満ちている。

「節をつけてみてください」とあるように、どれもこれも調子がいい。あちこちで七五調・五七調にぶつかって、これらのリズムが日本語という言語に深く根付いていることを感じることができる。こういうところから考えると、調子に合わせて、というのを嫌がる現代詩の傾向というのは、詩を思春期的なものに限定してしまう考え方につながっているのではないか、なんて思ってしまう。替え歌やなんかを連発していた小学生時代がよみがえってくるような、とても元気の出る一冊。